皮肉
母も新しい生活にゆっくりと慣れていきました。
外出1つ許可と言い訳が必要だった母は自ら行動するのは近くのスーパーのみ。
アパートに篭っていました。
そんな母を姉は度々外へ連れ出し
「自由で良いんだよ。怖い思いもしなくて良い」
と繰り返し伝えてくれました。
習慣というのは恐ろしいもので、母は入院中、父から電話がなると電話を取り、怒らせないよう優しい口調で対応、更には病院に父の言われた物を届けていました。
「今、どういう状況か解る?行ったら駄目!」
そう伝えるも母は離れたい人のお見舞いに訪れるのです。
1度私は言いました。
「今なら元に戻れるよ?どうする?」と。
母は「もう一緒に居るのは無理」と言います。
矛盾が生じます。
一緒にいたくないのに、相手の欲求に応える。
母は40年という月日の中でその事が、そうする事が当たり前になっていました。
繰り返しこうしたやり取りと父から離れた事によって母は日に日に、これまでが間違っていたのだと理解していきました。
若干洗脳されているのかと心配になった位です。
最後の父と母のやり取りは、父が電話してきて
「なんですぐ電話出ない!あの男の所に行ってたんか!」です。
母はいよいよ爆発して、「いい加減にして!」と一方的に電話を切ったのが最後の2人のやり取りでした。
父79歳、母73歳でした。
この歳でも浮気とか勘ぐるものなんだ…
理解し難い事でした。
一方の父は、入院中しかチャンスがない!と思っていた私は介護保険申請をしました。
入院中だったため、要介護2の判定が出ました。
その為、退院してから父は週2のデイサービスと週2回ヘルパー訪問が開始となりました。
父は家事を全くした事がありません。
嫌がらせで急に肉焼いたのと、風呂が壊れる位の音をだして滅茶苦茶な順序で掃除した事がある程度。
私と妹で配食サービスを見つけました。
安否確認もしてくれるというので安心したのも束の間、次は足らないから、冷たいから美味しくないから菓子パン買いに連れてけと市を2つ跨いで住む私を呼び出します。
それも歩いてすぐにスーパーがあるのにです。
父は介護を受けている自覚が全くなく、ヘルパーさんに「銀行に行きたい」など困らせた事が何度もありました。
週末は1人になるので、寂しいのか私や妹はよく呼び出され買い物に連れて行ったり、意味もなく病院に行きたがったり…
それこそ最初のうちは私と妹も動いていましたが、2人とも有休を使い行っていたので、「本当に必要な時だけにして!」と徐々に足も遠のいていきました。
酷い時は夫を呼び出し、浮気を疑う業者さんの家の前まで行き、母が出てくる待つ。
なんて事もありました。
父は慢性白血病疑いで定期的に病院に行っていましたが、1度貧血となり日帰りで輸血を受けたのですが、この事があってから輸血輸血と騒ぐようになりました。
でも1回の輸血でデータも改善した為、医師からは様子観察とその都度言われ帰宅する。といった調子でした。
また別の病院では腎臓がんのオペ、肺がんのオペをした事から長年受診していましたが、こちらでも経過観察と言われ、最終的に診察終了となりました。
本人は相当病院好きだったので、病院から来なくて大丈夫と言われ相当ショックだったようです。
私と妹は1つ通院が終了して安心しましたが。
父は病院をあちこち行っていたので、母も必ず同行し、カバンを持たされたり、医師から禁煙を勧められるとその場では「はい」と言うものの、否定されたり禁止されたりするのが極度にストレスを感じる父は、帰りの道中母に当たり散らし、母が車から降りる瞬間アクセルを踏み母が転ぶのを見ていたり、酷い時は車のタイヤで母の足を轢いて転ぶ母を冷ややかに見ていたそうです。
母と別れる原因となった日も母の自転車をチェーンロックで自転車をグルグル巻きにして鍵は捨て出かけられないようにしたり、ハサミや金槌などを傍に置いていたり
常軌を逸した行動がみられていたそうです。
しかし、今は母がいません。
私や妹に八つ当たりも出来ない父は項垂れるしかありませんでした。
ふと幼い頃に父から受けた数々の暴力、勉強の阻害や嫌がらせを父の顔を見る度思い出してしまいます。
しかし、私の子供たちは可愛がってくれる。
ジレンマに悩まされました。
かつては父に対して「母は私が守るから出ていけ!」と言った事があります。
父は小指の第1関節を親指の先で指し「こんな雀の涙で世話するのか?アホか」と揶揄された時に「あんたは無収入だろうが!」と言い取っ組み合いになりました。
この時、母は私が悪い。父が可哀想と父を庇いました。
結局は私たちの力がなければ離れられないのに、酷い人と母に対しても「はっきりしてよ!」とイラついていました。
私たち子供がどれだけ人生をねじ曲げられ迷惑してきたのか?
紛れもなく母と父だと思っています。
皮肉にも数年前に「離れさせてやる!」と言った私の言葉は現実のものとなったのです。
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